認知症の父が所有している不動産を売却して入院費に充てたいのですが、どうしたらよいでしょうか?

人がある法律行為を有効に行うためには、行為の結果を判断できる精神状態にあることが必要です。お父様のように判断能力が不十分な状態では、有効に不動産を売却することはできません。このようなときは、民法で規定されている法定後見制度の利用をお薦めします。法定後見とは、すでに判断能力が衰えている方のために、家庭裁判所が適切な支援者を選ぶ制度です。選ばれた支援者は、本人の希望を尊重しながら、財産管理や身の回りのお手伝いをします。本人の判断能力の程度に応じて、次の3つのタイプに分けられます。

 1 後見-ほとんど判断することができない
 2 保佐-判断能力が著しく不十分である
 3 補助-判断能力が不十分である

申立ができる人は、本人・配偶者・4親等内の親族等です。申立費用は、収入印紙800円と登記印紙4000円、郵便切手が数千円(家庭裁判所毎に異なります)、司法書士や弁護士に手続を依頼されるときは別に手続報酬がかかります。申立を受けた家庭裁判所が鑑定を必要と判断した場合は、茨城県内においては5万円程度の鑑定費用が必要となります。申立から開始までの期間は3ヶ月くらいかかっています。又、家庭裁判所は必要があると認めるときは成年後見人等を監督する監督人を選任することもあります。

成年後見人は職務として、日常生活に関する行為を除く全ての法律行為を本人に代わってしたり、必要に応じて取消したりします。

保佐人及び補助人は、本人が重要な法律行為をするとき同意するか否かを求められます。又、申立時に選択した特定法律行為を本人に代わって行います。重要な法律行為に同意したり、取消したりします。

ところで、売却対象のお父様所有の不動産が居住用財産であれば、家庭裁判所の許可が必要とされています。売却しないことにはお父様の入院費が捻出できない等やむを得ない理由のときに許可されます。許可を欠いた売却行為は無効と解されています。

成年後見監督人が選任されているときは監督人の同意が必要です。保佐人や補助人がいるケースでも同様で、本人のために適切な不動産売却であれば、有効な法律行為の手助けをします。

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